
要約
近年、資材高騰やインフレの影響で耐震化や建て替えが進まないマンションが全国に多く存在している。南海トラフ巨大地震や首都直下地震のリスクが高まる中、全国で約110万戸の共同住宅が耐震性不足とされている。さらに、耐震化が進まないだけでなく、耐震診断を受けていないマンションも少なくない。
ある分譲マンションでは、耐震性の問題が指摘され、7年間も改修や建て替えを模索してきたが実現せず、管理組合の理事長は困難さを漏らしている。このマンションは1980年代初頭に建てられた旧耐震物件であり、耐震診断の結果、震度6強から7の地震で倒壊や崩壊の危険性が高いとされている。
耐震改修を検討した際には2億円近くの見積もりが提示され、高額な追加負担に合意が得られなかったため、建て替え案が浮上した。しかし、建築資材や施工費の高騰により計画は頓挫し、費用の捻出が困難となった。管理組合は耐震補強を再び検討しているが、費用の問題が依然として解決されていない。
一方、耐震診断を受けていないマンションも多く、東京都内だけでも1253棟が耐震性がないとされ、そのうち7割が改修を行っていない。首都直下地震の想定では、東京では19万4000棟以上の建物が被害を受け、6100人以上が犠牲になる可能性があると推計されている。
国土交通省の調査では、耐震診断を行っていないマンションの約37%が「予算がない」ことを理由に挙げており、耐震化の困難さが浮き彫りになっている。このような状況下で、耐震対策の重要性が再度問われている。
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コメント内容
主な意見・論点
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耐震診断の影響と資産価値
- 耐震診断をすると不適合と判定される可能性があり、資産価値が下がるため、あえて診断を受けないケースがある。
- 耐震性が低いマンションは売却しづらくなり、買い手がつきにくくなる。
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マンション修繕・建て替えの費用問題
- 建築コストの高騰により、大規模修繕や建て替えが困難になっている。
- 管理費や修繕積立金の不足が深刻で、必要な工事ができないケースが多い。
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管理組合・住民間の意識の違い
- 住民の中には必要な修繕費用を支払いたくない人もおり、合意形成が難しい。
- 築年数が古い物件では、長年住んでいる人と新しく購入した人の間で意見が対立することがある。
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耐震診断・補助金の活用
- 耐震診断を行うことで、建物の寿命を延ばすための対策が可能。
- 行政の補助金制度を活用すれば、コストを抑えて耐震改修を行うこともできる。
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マンション vs. 戸建てのリスク
- マンションは老朽化すると修繕・建て替えの費用負担が大きくなるが、戸建てなら比較的自由に改修できる。
- 戸建ての場合、最終的に土地として売ることも可能だが、マンションは建物の価値が落ちると対応が難しい。
このように、マンションの耐震問題は「資産価値の低下」「修繕・建て替えの費用負担」「住民の合意形成の難しさ」など、多くの課題が絡み合っていることがわかる。